ベトナムにおける知的財産 翻訳体制の現状

  中国と色々問題を抱えている日本はチャイナープラスワンからチャイナーネクストという傾向を持っています。いわゆる、中国中心にし、中国以外にももう1つの拠点を持つということだけではなく、中国から完全撤退し、次の拠点へ移ることとなります。東南アジアの中で、ミャンマー・ベトナム・タイ・マレーシア・インドネシア・フィリッピンなどは注目されています。ミャンマーはまだインフラ整備と人材源確保の面で当分5−6年間がかかります。タイは洪水と政治の不安定です。マレーシア・インドネシア・フィリッピンは文化的に欧米流です。そのため、儒教流でインフラと人材源がある程度整備されているベトナムは日本企業にとって魅力的な投資先です。

  地理的にベトナムはインド洋から太平洋への海路の中継点です。人口 9000 万人、年間成長率5%ぐらいです。日本とは 40 周年国交があり、新日感情あふれている国民です。1990 年代と 2000 年代では日本はベトナムを製造拠点として投資してきましたが、2010 年代から製造拠点だけではなく、販売市場として見方を変えつつです。2014 年1 月 AEON モールがベトナムで初の店舗を持つようになりました。
  また、日本からの投資だけではなく、欧米からの投資も増加してきました。歴史的の問題があり、ベトナム戦争終結後(1975 年)、ベトナムの難民が欧米へ散らばり、アメリカに約 300 万人が在住しています。その中で、多くの人が欧米で起業し、成功した後、ベトナムで子会社を持つようになりました。

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  その背景の中で、ベトナムでの知的財産の需要は処理しきれないほど異常的に伸びています。外国企業がベトナムに製造拠点や販売拠点を投資する前に、まずは自社のノウハウとブランドを知的財産としてベトナム知的財産管理局へ登記します。そのため、外国語からベトナム語への特許翻訳のニーズが高いです。一方、ベトナム企業からの知的財産登録出願はまだコーポレーションアイデンティティの登録ぐらいです。ベトナムではノウハウを知的財産にすることはまだまだ遠い話の ようです。そのために、ベトナム語から外国 語へ特許翻訳のニーズはほとんどありません。外国語からベトナム語への特許翻訳のニー ズは物凄くありますが、ベトナムでは特許翻訳 専門家は多分手の指で数えられるぐらいです 。ここでいう特許翻訳専門家とは特許の分野 が詳しく、各種業界の専門知識を持つ専門翻 訳者ということです。しかし、完全特許翻訳 専門家ではなく、特許翻訳はできるという方 は多分各分野に沢山いるのでしょう。例えば 、特許の知識はありませんが、機械の専門家 などです。国家研究所の研究員や大学先生な どがアルバイトとして、翻訳をすることはよくあります。

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  特許翻訳ニーズが高く、特許翻訳専門家はほとんどないので、特許翻訳事業としては大きなチャンスだと思います。ベトナムでは特許管轄官庁は3つがあります。文化情報省の著作権管理局が著作権関連の管理をします。科学技術省の知的財産管理局が工業関連の知的財産を管理します。そして、農業と農村開発省の栽培局は農業関連の知的財産を管理します。民間の知的財産コンサル会社の専門家や個人専門家は約 200 人と言われています。但し、専門的にそしてコネ的に知的財産登録しやすいのは上記の3つの官庁の元職員が作る会社だと言われています。適確なコンサル会社経由で知的財産登録するならば、翻訳内容は多少間違いがあって、登録はできるということです。ちなみに、日本では弁護士と弁理士は別々ですが、ベトナムでは弁護士が弁理士の仕事をしますので、弁理士に相当する言葉はありません。
  その状況のために、ベトナムで特許関連翻訳者は大学先生、国家研究所の職員、そして、知的財産コンサル会社のスタッフです。特に計画的な育成プログラムはありませんが、それらの方々は専門知識を持つだけで、特許の翻訳をやってきました。また、特許翻訳をしているという意識はあまりなく、高度複雑専門資料翻訳ということです。

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  上記で説明したように、特許翻訳案件は主に外資系会社がベトナムに拠点設立する時に、知的財産を登録するため、使われる言語は投資ランキング(金額・頻度など)と比例します。良くあるのは英・日・独・韓・中・露です。特に欧米会社やシンガポール会社が英語中心で出願するので、英語・ベトナム語の翻訳はダントツです。ニーズは高い中、ベトナムで機械翻訳はほとんど発達していません。ご存知のように、機械翻訳では MT (Machinery Translation –自動翻訳)と TM (Translation Memory いわゆる CAT – 翻訳支援ツール)の2つのタイプがあります。MT のソフトを開発するために、その言語ペアの言語学者と言語アルゴリズム専門家の連携が必要です。ベトナムではこの分野はまだ重視されていず、使えるソフトはまだ市販にはありません。TM の代表としては SDL トラドスです。トラドスは2006 年からベトナム語対応となりました。しかし、SDL トラドスのライセンスは約 1000 ~ 1500 ドルのため、日本の物価の4分の1のベトナムでは、一般翻訳者にとって、トラドスはとても高級なものです。そのため、全然普及されていません。翻訳会社はエージェンシー系とブローカー系があります。ブローカー系はもらった翻訳をフリーランサーに回すだけなので、もちろんトラドスのことは無縁です。エージェンシー系は社内中心で翻訳するので、大手ならばトラドスを一部使うところがあります。ちなみに、弊社グリーンサンコンテンツは 2007 年からトラドスを導入し、現時点トラドス2007,2009,2011,2014 全て対応し、ベトナムでトラドスのパイオニアです。

Cattool  最近の新しいニーズとしてはベトナム国外からの翻訳要請です。ベトナム進出する前に、知的財産をベトナム語へ翻訳し、知的財産出願しておく外国企業も多いですが、逆に、ベトナムの既存の知的財産リストを入手し、面白いものがあれば、外国語へ翻訳することもあります。また、グローバル化と共に、ベトナムの会社が世界に向けての発信や、商品輸出する時にも、ブランドや、知的財産を外国の当局へ出願することが増えてきました。今まで、ベトナムの会社がそれに重視してこなかったため、外国に良い商品を出しても知的財産保護しなかったので、知的財産侵害されたことはよくあります。

  ベトナム国内では知的財産侵害で良く言われているのはソフトウェア分野です。最近の数年では企業向けのソフトウェア著作権の取り締まりを厳しくすることはありますが、個人向けのソフトウェア著作権はまだ 100%開放されています。ほとんどどんなソフトウェアでも 50 円ぐらいの価格で CD 入手ができます。これはベトナムのソフトウェア会社に良いこともあれば、悪いこともあります。外国向けオフショア開発会社には良いことです。ソフトウェアオフショア開発は労働集約型なので、大量のプログラマーを扱い、大量の PC で作業します。そのため、各 PC にプログラミング用の正規ソフトを使うと、莫大な金額となります。また、案件によって、使うプログラミング用ソフトもお客さんの要求技術で変わるし、数百万円から数千万円のソフトも必要な場合もありますので、正規ソフトを使うと、オフショア開発のコストメリットは出ないのでしょう。一方、国内向けのパッケージソフト開発会社には苦しむことです。個人向けのソフトウェアを作ったら、すぐコピーされるので、売れません。ベトナムの iPhone 普及率は高いですが、課金するiPhone アプリはほとんどありません。どこの携帯電話販売店に行っても、750 円ぐらいでどんなアプリでもコピーできます。但し、企業向けの業務系ソフトは著作権を厳しく取り締まりされるので、企業向け業務系ソフトの開発は生きています。
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  ベトナムの特許翻訳市場はまだ規模的に小さいですが、成長見込みは高いです。専門翻訳者はまだ少ないので、大きなチャンスがあります。これから、ベトナム特許翻訳業界に大に期待を持っています。


自己紹介

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グリーンサンコンテンツ 会長 グエン ミン ヴィエト (NGUYEN MINH VIET)

www.greensun.com.vn

1996 年~ 2003 年に7年間日本留学し、東工大情報工学科卒業しました。

2003 年は NTT データ系列会社でベトナムでソフトウェア開発のマネージャをし、

2005 年にグリーンサンソフトウェアを設立しました。

2009 年に翻訳子会社であるグリーンサンコンテンツ社を設立し、日本向け最大手翻訳会社となっています。

時事通信のベトナム関連ニュース翻訳、ソニー・キャノン・ニコン・FujiXerox・日立・パナソニック・ホンダ・クボタなど多くの日本のメーカーの取り扱い説明書翻訳実績あり。


ソース:http://www.nipta.org/Journal_J.html

【第104号(2014.2)】

Press_001_ Intellectual Property Translation in Vietnam

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