DTP作業導入によるメリットは、当初の「アナログ」工程を「デジタル」化することによる単純な効率アップから、デジタル化されたデータの2次利用やインターネットでの利用まで、可能性が広がっています。
制作上のメリット
DTP作業の最大のメリットは、“コンピュータの画面上で仕上がり状態を確認しながら制作作業ができる”という点にあります。DTP作業導入前は、デザイン、レイアウト、写真植字(写植)や版下作成、そして製版といった業務を、それぞれ高度な専門技術を身につけた専門家が担当していました。完全に作業が分担されていたため、自分の経験をたよりに仕上がり状態を予想して指示する必要がありました。しかし、DTP導入によって、それらの作業が画面上で確認できるようになり、しかもDTPオペレーターひとりで行えるようになったのです。
従来多くの専門家が携わっていた作業がひとりで行えるようになった結果、制作工程が簡素化され、人手だけでなく時間も短縮されて、コストの軽減にもつながっていきました。
さらに、CGなどアナログではできない表現も利用でき創造の幅が広がったこともメリットにあげられるでしょう。
デジタル化によるメリット
制作物をDTP作業で作成することにより、そこで使われた情報はコンピュータで扱えるデータ、つまり「デジタルデータ」となります。デジタル化された情報は、複製や修正が簡単であったり、保存・管理が簡単であったりと、デジタルならではのメリットがたくさんあります。
また、DTP作業の導入によってデジタル化た情報は、出版後も大きな資産となります。たとえば、
・雑誌で使用した写真データをホームページに流用する
・ポスターのデータを縮小/加工してチラシをつくる
・月刊誌の連載ページを集めて1冊の単行本として出版するなど、デジタル化された情報は2次利用、3次利用に大きなメリットをもたらします。データの管理さえきちんと行っていれば、それを活かす方法はいくらでもあるというわけです。
また、インターネット(ネットワーク環境)の高速化が進んだ現在、デジタルカメラで撮影した画像データを離れた場所に送信し即時にDTP作業をして記事を発行、といった離れ業も可能で、情報伝達のスピードアップにもつながっています。
豆知識
DTP作業でデータを作成するようになるまで、製版・印刷会社ではレイアウトする要素(文字や写真など)を合成するために、いろいろな種類の版材を使用してきました。これらがDTP化によってデジタルデータ上で行えるようになったため、大幅な版材の削減が実現しました最近では、生産が終了した版材などもあります。
現場からのアドバイス
印刷会社とのやりとりでは、DTP導入以前から使用されている用語もよく使います。これからDTP作業の仕事に携わる人も従来の工程の知識が必要になる場合があります。
解説
以前は印刷物として配布していた製品のカタログや取扱説明書を、PDFとしてWebサイトで公開し、必要な人だけにダウンロードしてもらうようにしているメーカーも増えてきています。DTP制作の工程は同じでも印刷コストをおさえられる、といったメリットがあります。
用語解説
・写真植字(写植)
DTP以前に文字組みで使用されていたシステム。ネ状の文字盤にレンズを通した光をあて、印画紙に焼付けて印字する。
・版下
写真製版に用いる原稿のこと。DTP以前は台紙の上に写真や文字などを配置し、それを製版カメラで撮影してフィルムを作成していた。
・版材
印刷工程で使用する材料のことストリップフィルム(修正用フィルム)など、DTP登場以降に使われなくなってきている版材も多い。
・CG
Computer Graphicsの略。コンピュータを使って画像や映像をつくる技術の総称。広い意味では、DTPで扱う写真画像などもCGだといえる。
(続く)