プロセスカラーであるCMYKのインキは、半透明なため、実際に重ね刷りをするとモニタ表示やプリント出力とは違った結果になる場合があります。カラーを設定する場合、「実際の印刷ではどうなるか」ということをよく考えて設定します。
オーバープリント(ノセ)とノックアウト(ヌキ)
カラーの印刷物を作成する場合、カラーの設定はCMYKのプロセスカラーで行うのが基本となります。違う色が重なって配置されている場合、印刷される時点では、下の色が切り抜かれた状態で印刷され、この状態を「ノックアウト(ヌキ)」といいます。一方、下の色が切り抜かれずに上の色を重ねて印刷する状態のことを「オーバープリント(ノセ)」といいます。
ブラックは、他の色のインキと重ねても黒く見えるので、「版ズレ」で起きた隙間に紙の色が見えてしまうのを防ぐために、通常のカラー印刷では、オーバープリントに設定するのが基本です。
リッチブラック
ベージレイアウトソフトでは、プラックのオーバープリントが基本設定となっています。そのため、K100%で指定した面積の大きな図形などを写真画像に重ねたような場合、少し下にあるものが透けて見えることがあります。
これを防ぐには、K100%で指定した図形をノックアウトに設定すればよいわけですが、版ズレで紙色が出てしまう可能性があります。そこで、オーバープリントの設定のまま、[K100%、C30%、M30%、Y30%]のように他の色を混ぜてつくった「リッチブラック」を使用して、下にあるものが透けないようにします。
トラッピング
通常、プラックのオーバープリント以外は、ノックアウトの設定で重なりあうものを印刷することになりますが、使用している色によっては版ズレが起こると、隙間に紙の色が出てしまいます。その防止策として、トラッピング(トラップ処理)を行います。トラッピングでは、2つの色の領域の境界を少し重ねて、版ズレが起きても紙の色が出ないようにします。
注意
リッチブラックといっても、K100%にプラスする他の色をすべて100%にしてしまうと、合計で400%となってしまい、実際の印刷ではインキ量が多すぎる状態になり印刷トラブルが生じます。下にあるものの色に多く使用されている色を30%〜50%程度で混ぜ、インキ量の合計が多くならないように工夫します。
解説
トラッピングでは、通常、2つの色のうち、淡い方、または明るい方をはみ出させて重なり部分をつくります。背面にある色をはみ出させる場合は「チョークトラップ」、逆の場合は「スプレッドトラップ」と呼びます。
注意
ページレイアウトソフトでは、特に指定しなくても、自動的にトラッピングが設定されているため、特に設定を変更する必要はありません。トラッピングの設定は、出力環境によっても違ってくるので、必要に応じて設定を変更す。場合は、印刷会社などとの事前の打ち合わせが必要です。
用語解説
- スプレッドトラップ
トラッピングで、前面にある領域の色の明度や彩度が高い場合、その領域を少し太らせて、重なり部分を作成する方法。
- 版ズレ
色を重ねて印刷する時に生じた微妙なズレのこと。ヌキの部分の周辺では、このズレによってインキがない部分ができ、紙の色が見えてしまう場合がある。
- チョークトラップ
トラッピングで、背面にある領域の色の明度や彩度が高い場合、その領域を少し太らせて、重なり部分を作成する方法。
- ブラック(墨)のオーバーブリント
レイアウトソフトでは、初期設定でブラックはオーバープリントに設定されており、Ilustratorではノックアウトの設定になっている。
- オーバープリントプレビュー
オーバープリントの状態を確認するため、レイアウトソフトなどでは画面でシミュレーションできる「オーバープリントプレビュー」という機能がある。
- 毛抜き合わせ(ケヌキアワセ)
製版用語。ヌキ合わせで接している領域どうしで、髪の毛1本程度のわずかな重なりをつくって、版ズレを目立たせないようにすること。