DTP制作の印刷とは、“同じ内容のものを大量に複製すること”だといえますが、プリンタのように印刷するオンデマンド印刷の登場によって、DTP制作でより広範囲のニーズに応えられるようになってきました。
DTP制作でのオンデマンド印刷とは
「オンデマンド印刷別」とは、 “必要なときに必要なだけ”印刷できる、少部数に対応した印刷方式のことです。
通常の印刷方式では、1,000部以下の少部数で印刷するとコストが高くなってしまい、採算が合わないという場合も多くあります。オンデマンド印刷では、プリンタと同じようにトナーや液体インキで印刷する方式や、通常の印刷工程をコンパクトにした方式の印刷機が使用されるため、DTPデータから直接、必要に応じた部数を短時間で印刷することができます。
また、オンデマンド印刷機のなかには、印刷後の工程である製本機能を搭載した種類もあり、印刷から製本までの工期も大幅に短縮することが可能です。
DTP制作のオンデマンド印刷のデメリットといわれていた品質についても、最近ではかなりの改善がみられるため、現在ではより幅広く利用されるようになってきました。
オンデマンド印刷でできること
DTP制作でのオンデマンド印刷は、少部数の印刷物を低コストで作成できるほか、さまざまな利用法やメリットがあります。
出版社は本のデータだけを保存し、注文に応じて必要な部数だけ印刷・製本して販売すればよいので、在庫をもたなくてすむようになります。また、絶版となってしまった本の原本をスキャニングしてデジタル化し、復刻版としてオンデマンド印刷で注文数だけ制作販売したり、個人的な内容の本をごく少数から(1冊からでも作成出版できる、といった今までとは違った出版方法も可能になりました。このような「オンデマンド出版」を手がける会社も増えてきています。
また、無版式のオンデマンド印刷はデジタルデータから直接印刷するため、1部ずつ印刷内容を変えることができます。データベースと連係することで宛名つきのDMを印刷したり、本1冊1冊に顧客の名前を入れるなど、DTP制作でオンデマンド印刷のメリットを活かした利用も拡大しています。
解説1
オンデマンド印刷機には、オフセット印刷機と同じように刷版を作成するタイプ(有版式)のものと電子トナーを利用するタイプ(無版式)のものがあります。解説オンデマンド印刷のことを「デジタル印刷」と呼ぶこともあります。
解説2
通常、出版社では印刷した書籍などの在庫を保管するために倉庫を利用しています。注文が入るたびにその在庫から出荷するわけですが、本の種類などが増え、倉庫に入れなくてはいけない在庫が増える一方、その維持管理だけでも非常に多額の経費がかかっています。在庫をもたず、データから“必要に応じて “印刷物を作成できるオンデマンド印刷は、出版社にとっては、非常に魅力的な技術であるといえます。
解説3
無版式のオンデマンド印刷機を利用して、1部ずつ内容を変えて印刷する印刷のことを「バリアブル印刷」と呼びます。
用語解説
- 絶版
発売元にも在庫がなく、今後つくる予定もないため新たに入手することが困難な本などのこと。印刷の元になる版下や製版フィルムが存在しない場合が多い。
- スキャニング
スキャナを使用して、写真・イラストなどの原稿を読み取ってデジタル化し、アナログの素材をビットマップデータにすること。
- 復刻版
絶版になった本などを新たにつくりなおして再発行いたもの。印刷の版が残っていないものなどは、原本をスキャニングするなどして作成する場合が多い。
- POP(ポップ)広告
書店などの店頭に展示される販促物(広告)のこと。書籍や雑誌のキャッチコピーなどを掲げるのが一般的。POPスタンド、陳列ビラ、紙什器などの種類がある。
- バリアブル印刷
印刷物の一部分の内容を1部ずつ変えて印刷する方法。版を使わないオンデマンド印刷向き。抽選番号の印刷やデータベースと連係したDMの宛名印刷など。
- DM
ダイレクトメールのこと。無差別に配付されるチラシなどと違い、個人宛に郵送などで届く広告や告知文書のこと。
(続く)