IllustratorはDTP制作におけるドロー系ソフトウェアの定番です。地図やグラフ、イラストなどを描くときは、ほとんどの場合、Illustratorで作業します。まずは、DTP制作にIllustratorで扱うベクトル画像の構造を理解しておきましょう。
ベクトル画像の描画
基本図形の組み合わせ
DTP制作でIllustratorには、四角形や円など基本的な図形を描画するためのツールが用意されています。これらのツールを使用して描画した形を組み合わせたり、拡大縮小小/回転/傾斜などの変形を加えたりすることで、図版を作成していきます。
アンカーポイントとバス
Illustratorで描画した図形は、「アンカーポイント」という点と、それをつなぐ「パス」という直線や曲線で構成されています。そのパスで囲まれた範囲に色をつける「塗り」と、線そのものの太さ(線幅)や色を設定する「線」の設定によって、図形を作成していくのが基本となります。
ペジェ曲線
DTP制作に「ヘジェ曲線」はコンピュータで曲線を描く方式のひとつで、Illustratorでは、このペジェ曲線を使って曲線を描きます。直線の場合は、ふたつの離れた位置にあるアンカーポイントがパスでつながっています。曲線でも同様にふたつの離れた位置にあるアンカーポイントがバスでつながっていますが、アンカーポイントからパスとは別に伸びる「ハンドル」があり、これをコントロールすることで、パスの曲がり具合を調節することができます。思いどおりの曲線を描けるようになるには、少し練習が必要です。
文字のアウトライン化
Illustratorでは、TrueTypeフォント、OpenTypeフォント、PostScriptフォントなどのアウトライン情報をもつ(画面上できれいに見える)フォントで作成された文字のアウトライン情報を抽出することができます。つまり、文字をアウトライン化して、図形として扱えるように変えることができるのです。アウトライン化することによって、フォントの属性(フォント名やサイズなどの情報)で構成されていた文字が、アンカーポイントとパスで構成された図形になり、さまざまな加工が可能になります。なお、完全に図形となっているので、アウトライン化前にはできた、文字の修正やフォント指定の変更などはできません。
解説
ベクトル画像数学で学んだ「曲線グラフ」のように、座標と直線や曲線を定義する数式とで成り立っています。拡大縮小などの変形を行うと、それに応じて数式が変更されます。変更された数式を元にラスタライズ(ピクセルやドット情報への置き換え)が行われるので、モニタへの表示やプリンタへの出力でいつもきれいな結果が得られます。
豆知識
DTP制作でペジェ曲線は、フランスの自動車メーカー「ルノー」の技術者ビエールベジェ氏が考案したものです。
注意
モリサワのOCFフォーマットのものなど、一部の和文フォントには、アウトライン情報にプロテクトがかかっているものがあります。ATMフォントをインストールしていて、画面上文字がきれいに見える状態でも、「文字のアウトライン化」はできません。モリサワの和文フォントの場合、New CIDフォーマットやOpenTypeフォーマットであれば、「文字のアウトライン化」が可能です。
用語解説
- シアーツール
水平軸、垂直軸、または指定した軸を基準に、指定した角度に沿って、オブジェクトを傾けたり歪めたりすることができるツール。
- リフレクトツール
指定した表示されない軸(線対称の軸)の反対側にオブジェクトを反転できるツール。
(続く)