DTP制作できれいに文字を組んでいくためには、文字に変形を加えてバランスをとったり文字と文字の距離を調節するなどして、文字の見栄えを整えていきます。ここでは、DTP制作で文字組みの基本的な考え方や用語を理解しておきましょう。
文字詰め
読みやすい文字組みをつくるうえで、文字と文字の距離は重要な要素です。DTP制作で文字の中心からとなりの文字の中心までの距離のことを「字送り」、字送りを調節することを「スペーシング」、「文字詰め」などといいます複数の文字を対象として、同時に字送りを調節する方法をトラッキング」といいます。
トラッキングでは対象となっている文字列は均一に調調節されます。このとき、2バイト文字にくらべて1バイト文字のほうがより詰まってしまうことが多く、書体によっては文字と文字がくっついてしまうので注意が必要です。
一方、字間を個別に調整する方法は「カーニング」といい、文字と文字の間を1箇所ずつ、詰め具合を設定して調節します。
トラッキングもカーニングもレイアウトソフト上で設定する際には「em(エム)」という単位が使われています。この単位は欧文書体の大文字のM(日本語の場合は全角文字の仮想ボディ)の幅を1emとして、文字の詰め具合を表すものです。DTP制作では標準使われています。
文字の変形
DTP制作で語句を強調したり、見出しやタイトルに変化をつけて読みやすくデザインする場合や、文字が入るエリアに対して文字が多すぎちょうたいへいたいる場合に、文字の横幅を狭くする「長体」や高さを低くする「平体」に変形させることがあります。
ほとんどのレイアウトソフトには、文字の形の縦比率や横比率を変える機能が備っており、微細な変形も簡単に行うことができます。ただし、極端な文字の変形はかえって読みにくい文字組みになることもあるので、十分に気をつけましょう。
もともと傾斜した「Italic」や「Oblique」といったスタイルが用意されている欧文フォントでは、その書体を使用します。一方和文書体には斜体用のスタイルは用意されていないのが普通なので、斜体指定はレイアウトソフト上で設定します設定方法はソフトによって異なります。
解説1
emとは、歌文の大文字の「M」の横幅を基準にした単位で、使用するフォントの全角1文字分を「1em」と表します。「emスペース」は、使用しているフォントの「M」と同じ幅のスペースということになります。それに対して「en(エン)」はemの半分の幅である半角分のことを表しています。
解説2
レイアウトソフトには、文字詰めのための機能があらかじめ搭載されています。QuarkXPressでは「H&J」機能、Illustratorでは「文字ツメ」、InDesignの「ハイフン設定」、「ジャスティフィケーション設定」、「文字組みアキ量設定」、「Adobe日本語段落コンボーザ」などです。
解説3
レイアウトソフトなどでの文字の変形は、1%きざみで設定でき、100%以上の設定もできるため、かなりの自由度があります。DTP制作以前の写植では変形をかけるためにレンズを使用していたため、10%きざみで左右、天地各4種類の変形のみ指定でき、それぞれに「長体1」、「平体4」などの呼び方がつけられていました。「長体」、「平体」ということばは、いまでも「左右幅を縮めた文字」、「上下高を縮めた文字」という意味で使用されています。
用語解説
- プロポーショナル詰め
文字と文字の間が一定になるように、文字それぞれの幅によって字送りを変える組み方。文字幅が異なるフォントはプロボーショナルフォントと呼ぶ。
- 歯
写植システムで使う歯車ビッチを基準とした単位。1歯= 0.25 mmで、主に字送りや行送りの指定に用いる。「Q」に対して「H」と表記する。
- 写植
写真植字の略。DTP以前に文字組みで使用されていたシステム。ネガ状の文字盤にレンズを通した光をあて、印画紙に焼き付けて印字する。
- ItalicとOblique
「talic」は、もともと右に傾いたデザインのフォントのことを指す。傾けただけで大幅にデザインの変更のない斜体字のことを「Oblique」といって区別する。
- 全角文字
バイト文字のこと。日本語で使用するひらがなかなや漢字はすべて全角文字。和文フォントでは、半角英数だけでなく、全角の英数文字も用意されている。
(続く)