日本語からベトナム語へ翻訳する際、原文の内容を正確に伝えることの保証に加えて、翻訳全体で用いられている語彙にも注意を払う必要があります。翻訳原稿をチェックする際、句読点や特別な記号などの要素以外に、語彙の統一性を確認することも重要です。
第29章:ベトナム語翻訳のチェックスキル・パート9でご紹介した固有名詞をチェックする方法に引き続き、本章では日本語からベトナム語への翻訳原稿をチェックする際の「語彙の統一」についてご紹介したいと思います。
16.語彙の統一
翻訳の語彙について:翻訳の語彙とは、翻訳者が日本語からベトナム語への翻訳原稿内で最適な言葉を選択し、他の翻訳者(いる場合)と統一することを意味します。その後、翻訳全体でその単語を用いる必要があります。
ただし、ベトナム語では一つの単語で様々な意味を持つ場合がかなり多いため、選択された単語が必ずしも正しいとは限りません。使うときにその単語が原文の種類と合っているかどうかを検討する必要があります。
翻訳者とチェッカーの間で、翻訳の対象読者を考え、適切な翻訳の語彙の統一をしておかなければなりません。また、読者を混乱させないように様々な意味を持つ単語を使用することも避けた方がベストです。さらに、翻訳の語彙の統一がされていなければ、日本語からベトナム語へ翻訳する際、翻訳の意味が異なってしまう可能性があります。
特に高い統一性が求められるドキュメントを翻訳する場合、語彙の統一はとても重要です。具体的には、規制、契約、出生証明書、結婚登録などの法的文書です。
例:
契約の基本的な内容には、次の部分が含まれます。
- 用語の解釈(契約の用語を説明する)
- メインの内容(製品、サービスに関連する)
- 一般的な項目(一般的なコミットメント)
「用語の解釈」において典型的な文章とは次のようなものです。
In this Agreement, ABC Corporation is referred to as “The Company”.
- 分析:「The Company」は定義であり、翻訳全体で「The Company」という単語を用いて統一されています。
規範に関するもので明確化することが求められる法的文書またはマニュアルを翻訳する際、翻訳者とチェッカーは、正しく翻訳するため、統一されている単語を勝手に同義語で変更してはなりません。自分で決められない場合や単語の使い方が分からない場合は、直接クライアント・翻訳会社へ相談するか、他の翻訳者の訳を参考にした方がベストです。
翻訳する際、語彙を統一する以外に、いくつかの翻訳サポートツールを利用して翻訳メモリ(TM)を作成することにより、同じ単語に出会った際、検索時間を節約することに役立ちます。翻訳における語彙の統一は、検索および置換ツールを使用して翻訳するとき、または日本語からベトナム語への翻訳原稿をチェックときに行うことができます。
例:
男体山は栃木県日光市にある標高2,486mの火山です。
- 分析:「男体山」の地名は、翻訳全体において「núi Nantai」または「Nantai-san」のどちらかで翻訳を統一する必要があります。
翻訳の語彙の統一は、翻訳者だけでなくチェッカーにとっても不可欠なスキルです。したがって、翻訳者とチェッカーは、翻訳するときに情報を交換し、一貫性が必要な単語とコンテキストを把握してから、正しい単語が使用されていることを確認する必要があります。
続く