日本語からベトナム語へ翻訳する際、下訳は必須スキルと言われています。原文の意味を正確に伝えるため、翻訳者に語彙力と文章分析スキルが必要となります。また、最終チェックをする時に誤りを回避し、より良い品質にすることができます。
日本語からベトナム語へ翻訳する際、複数の意味を持つ単語や、複数の単語を組み合わせる時、意味が完全に違う熟語になることがよくあります。本章では、適切な訳語にする翻訳スキルに注目します。
14.適切な訳語
ベトナム語では、漢字が由来となっている言葉がかなり多く、間違えやすくなっています。
では、どのようにこのような誤りを避けることができるでしょうか?
一つ目の注意点は、見慣れた単語に出会うとき、そのまま翻訳をせず、文脈をよく読んでから、その言葉が他の意味を持っているかどうかを確認します。
例1:
始末(しまつ)(thủy mạt)
- 分析:通常この言葉は「最初から最後まで」という意味を持ちますが、時には文脈により「結果」や「処理」という意味になることもあります。
- 例文:
調子がいいと聞いていたがこの始末だ。-> Tôi nghe nói là nó ở trong tình trạng tốt, nhưng lại kết thúc như vậy
秘密を知られたからには始末する。 -> Nếu nó đã biết được bí mật thì hãy xử lý nó.
資本不足のため、店を始末して、田舎に帰りました。-> Do thiếu tiền vốn, nên tôi đã đóng cửa cửa hàng và trở về quê.
二つ目、日本語では、複数の漢字から組み合わせた熟語がよくあり、それらの漢字の意味で翻訳すると大きな間違いになることがあります。
例2:
猫舌
- 分析:漢字を見ると、「猫の舌」という意味。
- ただし、この熟語は「熱い食べ物が食べられない人」を意味する言葉です。
例3:
環境経営
- 分析:漢字を見ると、「環境を経営する」
- 調べてみると、これは「環境にやさしいビジネス」を意味する経済用語です。
上記の2つの例文を見ると、日本語からベトナム語へ翻訳する際、漢字の意味を訳すのではなく、多くのソースデータを参考にする必要があります。
三つ目、正しく翻訳するために単語の意味を検索するだけでなく、原文の文脈により適切な訳語を選ぶことは重要です。
例4:
結果よりも過程のほうが大切だということもある。
- 分析:「過程」は「giai đoạn」または「quá trình」を意味する言葉です。
- 訳文:「Cũng có lúc quá trình sẽ quan trọng hơn kết quả.」
例5:
“ Chẩn đoán khả năng chống động đất của tòa nhà, gia cố tòa nhà hoặc tường (vách).”
- 分析:上記の訳文は、意味的に間違いありませんが、「chuẩn đoán」は適切ではありません。「chuẩn đoán」は「chẩn đoán bệnh」、「 tiêu chuẩn chẩn đoán」など医療の専門用語であるためです。
- 修正後:「Phán đoán khả năng chống động đất của tòa nhà, gia cố tòa nhà hoặc tường (vách).」
最後の注意点は、日本語からベトナム語へ翻訳する際、意味が近い言葉に注意を払わなければなりません。
例6:
「過程」 vs 「経過」
- 分析:
+ 過程 :プロセス、一連の変更の中の一つの段階。 例えば: 生産過程 : quá trình sinh sản
+ 経過 :単なる一つの段階ではなく、一連のプロセス。
例7:
「伝染」 vs「感染」
- 分析:上記の両方の単語は、感染を意味しますが、用い方が異なります。
+ 伝染:「truyền nhiễm」以外に「 lan truyền」という意味を持っています。「ある行為はある範囲を超えて広がり、他の範囲に影響を与える」の場合などに用いられます。
+ 感染 : 「truyền nhiễm」「疾患の感染」の場合などに用いられます。
語彙の用い方は翻訳者にとって非常に重要なスキルと考えられています。翻訳の経験を通してこれらのスキルも鍛えれば、より高い品質の翻訳ができるようになるでしょう。
(続く)