近年のパーソナルコンピュータ(パソコン)の急速な普及によって、「DTP作業」ということばが日本でも次第に一般化してきました。また、ベトナム語翻訳の際、こんなDTP作業はとても必要です。ここでは、DTPとはいったいどんな作業のことを指すのか、基本的なことを覚えておきましょう。
従来工程からDTP工程へ
「DTP」とはDesk Top Publishing(ディーティービーデスクトップバブリッシング)の略で、 “個人でも購入可能なパソコンで出版物などを制作すること”を指します。
DTP作業が誕生する前は、何かを印刷したい場合、印刷会社に依頼するしか方法がありませんでした。大きな出版社でもそれは同じで、「この大きさのこの文字をつくってください」とか、「この写真をここに配置してください」などと、それぞれの分野のプロに指示を出して、作業を進めてもらうというのが一般的でした。この場合、どのように仕上がるのかを正確に想像しつつ指示しなくてはならないため、専門的な知識や技術の習得が必要とされる作業でした。
もちろん、それら「アナログ」の手作業も、時代の流れとともに「デジタル」化されていきましたが、使用する機械は非常に高価な専用機だったため、導入した印刷会社の負担も大きくたいへんでした。
1980年代半ばに誕生したDTP作業は、こうした従来の作業工程の一部をデジタル化し、しかも比較的安価なパソコンで制作できるという、印刷を大幅に簡易化するものでした。制作現場場では、急速にDTP化が進み、印刷会社や出版社の仕事の体制も大きく変わっていきました。現在ではDTPの担う範囲が急速に広がり、印解説刷機を使う直前の段階までをパソコンで作業するということが多くなっています。このため、最近ではDTPのことを「Desk Top Publishing」ではなく、「Desk Top Prepress」ということが多くなっています。
どこまでがDTP?
最近は、個人でもパソコンとカラープリンタで美しい印刷物をつくることができます。しかし、その方法で、何千部、何万部もの大量の印刷物を作成することは、費用や時間がかかりすぎるので現実的ではありません。
広い意味では、一般の家庭にあるパソコン+プリンタでの作業もDTPと呼ぶことができますが、本書では、 “最終的に印刷会社などに印刷や製本を依頼する”ことを前提とした作業がDTP作業だと考えて解説しています。
用語説明
・デジタルとアナログ:データなどを連続ではない、とびとびの数値の信号で表すことをデジタル、連続して変化する物理量によって表すことをアナログという。
・印刷のアナログ工程:DTP以前の版下や原稿をやりとりする工程をアナログ工程と呼ぶ。写真原稿など、デジタルデータになっていないものをアナログ原稿と呼ぶ。
・印刷のデジタル工程:MOディスクなどのメディアに入ったレイアウトデータ(デジタルデータ)をやりとりする工程をデジタルエ程と呼ぶ。
・オンデマンド印刷:要求にしたがって(on-demand)必要なときに必要な部数だけを印刷するためのシステムのこと。少部数でも低コストで印刷できるなどのメリットがある。
(続く)