日本語からベトナム語への翻訳は、訳文を原文の内容に一致させ、適切な表現方法を用いることが求められる作業です。そのうえ、最終チェックの段階となる品質を高めるチェッカーの役割もかなり重要となります。
前章で述べた言葉のコンテキストとニュアンスなどの要素に加えて、チェッカーは綴りや固有名詞の翻訳にも特別な注意が必要です。固有名詞には、場所、人の名前、ブランドや製品の名前などがあります。したがって、日本語からベトナム語への翻訳原稿をチェックする際、特に注意が必要です。
9.固有名詞の翻訳に関する注意点
日本語からベトナム語へ翻訳する際、固有名詞に出会うことがよくあります。これらの固有名詞の統一を翻訳とチェックの作業開始前にしておかなければなりません。
固有名詞の翻訳をチェックするときに必要なスキルは次のとおりです。
a. 製品、ブランド、会社の公式ウェブサイトや用語集などで確認します。
製品名、ブランド名、または会社名などが登場した場合、特にこれらの固有名詞の正しい訳語を検索する際、用語集と会社の公式ウェブサイトの使用がベストです。誤訳を回避するため、絶対に固有名詞を適当に翻訳してはいけません。
社名やホームページを探すことが難しい場合、グーグルまたは https://www.mapion.co.jp/のウェブサイトで会社の住所を検索することができます。
b.社名を英語で残すか、翻訳するか、またはクライアントのスタイルガイドに従うかをどのように決定するか
用語集がなく、ホームページが見つからない場合、クライアントのスタイルガイドに従い、ブランド名、商品名は英語で残した方がベストです。(スタイルガイドについては「第6章:ベトナム語翻訳の際でストラテジーを立てるスキル・パート2」をご参照ください)翻訳する際、事前にクライアント/翻訳会社へ相談する必要があります。
c. 日本の地名の翻訳
- 日本の地名は、次の3つのカテゴリに分けられます。
- 自然の地名:川、山、湖、島、岬など範囲の広い地名:山脈、台地、平野など
- 都道府県、市町村、丁目など
- 人工物の地名:道、橋、駅、空港、港、公園など
これらの地名には、次の2つの一般的な翻訳方法があります。
- 地名の直後に地形の要素(san、gawaなど)を付けます。
+例:
筑波山→ Núi Tsukubasan
利根川→ Sông Tonegawa
- 地形の要素(san、gawaなど)も翻訳します。
+例:
筑波山→ Núi Tsukuba
利根川→ Sông Tone
上記の翻訳方法以外に、日本語からベトナム語への翻訳作業中に他の特定のケースに出会う場合もあります。その際、訳語の決定はインターネットからの情報源を参考にする必要があります。
c. 人の名前
会社名やブランド名など固有名詞の場合、「固有名詞の訳語は翻訳者が勝手に決めない」という原則があります。これらの固有名詞は会社のイメージを表すため、適当に翻訳すると会社の名前を間違えたり、ビジネスのイメージに悪影響を及ぼす可能性があります。
固有名詞を適当に翻訳してはいけない場合:
- 人の名前
- 企業名
- ブランド名
- 商品名
- 役職
- など
日本語での役職名は会社によって異なります。したがって、役職の翻訳は翻訳者とチェッカーが会社のホームページで確認する必要があります。
例:
「Vice president」は「理事長」または「副理事長」と訳され、他と異なるケースとなる場合が多くあります。
人の名前を翻訳する場合、英語のように順序を逆にするのではなく、姓と名の順序は日本語のままにします。
例:
津賀一宏→ Tsuga Kazuhiro ( Kazuhiro Tsugaと訳さない)
逆の場合、日本語の名前を英語からベトナム語へ翻訳する際、姓と名の順序を逆にする必要があります。
例:
Haruki Murakami → Murakami Haruki (村上春樹)
その上、特殊な読み方となる日本語の名前にも注意する必要があります。書き方は同じですが、発音は人の出身地や居住地によって異なります。
例:
「Eleanor」という名前の場合、アメリカ人は「エレノフ」と発音しますが、フランス人は「エレノール」と発音します。
一般的に固有名詞を翻訳する際、次のステップに従う必要があります。
- クライアントのスタイルガイドに従う(スタイルガイドがある場合)
- 公式ホームページで検索する
- TMと過去翻訳を参照する
インターネットで固有名詞を翻訳することもできますが、この方法の精度はあまり高くないため、参照のみとして使用した方がベストです。基本的に、日本語の固有名詞をベトナム語へ翻訳する際、上記の3つの方法を適用してみてください。
続く
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