DTP制作では、すべての原稿がはじめからデータ化されているわけではありません写真原稿などは、DTP制作でデータ化することもよくあります。ここでは基本的な写真原稿の取り扱い方をみていきましょう。
透過原稿と反射原稿
DTP制作で写真を画像データとして使用したい場合、それら写真原稿を「スキャナ」を使ってデジタルデータ化します。これを「スキャニング」、「スキャンする」などといいます。
印刷用としてよく使われる写真原稿稿は、色の透明度が高く、高品質の画像が得られる「ポジフィルム」です。ポジフィルムやネガフィルムなど、光を透かして画像を読みとるタイプの原稿を「透過原稿」と呼びます。一方、一般的に写真といわれている、印画紙に焼き付けた「プリント(紙焼き)」や手書きのイラスト、印刷物なげんこうかみやはんしゃげんこうどは「反射原稿」と呼びます。
通常、DTP制作で反射原稿はフラットベッドスキャナで取り込むことができます。透過原稿は、透過原稿も扱えるタイプのフラットベッドスキャナか、フィルム専用のスキャナで取り込みます。
スキャナには安価なものから高価なものまでさまざまな種類があり読み込む原稿の種類や最終的に得られる画像の品質によって使い分けます。高品質な画像データか必要な場合は、印刷会社などに依頼して、高価なドラムスキャナで取り込むことを考えます。
スキャン時の解像度
DTP制作でスキャニングの際に必要な解像度を割り出すためには、その画像データの使用サイズ、印刷線数は何線かという情報が必要になります。印刷物の網点(ドット)の最少の大きさは印刷線数によって決まりますが、カラーの商業印刷物では150線か175線、色では150線か133線が一般的です。175線で印刷する場合、それに必要な写真画像の解像度は、その線数の2倍にあたる350 ppiとなります。ただし、これは写真原稿をそのままの大きさで使用した場合となるため、実際には、
スキャン時に必要な画像解像度(ppi)
=印刷の線数(Ipi)×2×レイアウトでの拡大縮小率
ということになります。ただし、モノクロ2階調の線画など境界がはっきりしたタイプの原稿のスキャニングは、階調がある(濃淡がある)写真原稿とは異なります。上記の式にあてはめて計算した解像度では輪郭のギザギザが目立ってしまうため、さらに高い解像度でスキャンする必要があります。イメージセッタの出力解像度(2,400 dpiや3,600 dpi)と一致させるのが最適といえますが、使用サイズで1,200 ppi程度になる設定でギザギザは目立たなくなります。
豆知識
1.原稿をパソコンの中に取り入れる、という意味で、スキャニングすることを「取り込む」ともいいます。
2.暗い場所でも撮影しやすい高感度フィルムISO800など)の原稿は、フィルムの粒子が粗いため、印刷で拡大して使用する場合、高解像度のスキャニングをしても、粒子が目立ってしまうことがあります。
解説
ネガフィルムは、基本的にプリントするために使用されるものなので、そのままスキャニングするよりもプリントされたもの(紙焼き)をスキャニングしたほうがクオリティの高い画像を得ることができる場合があります。
Q&A: アタリって何ですか?
Q: 「アタリを入れておいてください」といわれたのですが、アタリって何ですか?
A: 印刷に使用する画像(高解像象度)はデータ容量も大きく、パソコンの性能によっては作業が遅くなったりして不便です。そこで、DTP制作中は、データ容量の小さい仮の画像(低解像度)を使ってレイアウトをします。この仮の画像のことを「アタリ」といいます。また、画像データを使わず、画像の輪郭線だけで画像の配置される位置などを指定をする場合は、その線を「アタリ野」といいます。
用語解説
- デジタル化
DTP制作では、文字の情報をテキストデータに、図版や写真のデータをグラフィックデータにして、コンピュータ上で扱えるようにすることをいう。
- ネガフィルム(ネガティブフィルム)
モノクロでは白黒・明暗が逆、カラーでは補色になっているフィルムのことで、銀塩カメラで使用されている。プリント(紙焼き)をつくるのに必要。
- フラットベッドスキャナ
コピー機のように平らなガラスの読み取り面に原稿をセットして読み取るタイプのスキャナ。読み取りの機械部分が水平に移動してスキャンする。
- ドラムスキャナ
原稿を透明な簡(ドラムまたはシリンダー)に巻き付け、高速で回転させてスキャンするプロ用スキャナ。高品位で高解像度のスキャン結果を得られる。
- モノクロ2階調
モノクロ画像の表現方式で、白と黒のふたつの値で表すこと。中間調のグレーは密度の違いで表現する。「モノクロ2値」ともいう。
(続く)